胃のポリープといわれた時の心構え
検診や健診で、胃ポリープを指摘された。さて、貴方ならどうする?
1、すぐに、医療機関にいって二次検査の胃カメラを受ける。
2、去年も同じことをいわれたのでほかっておく。(去年は良性の胃ポリープだった。)
3、根拠はないが、忙しいのでほかっておく。多分、大丈夫だと思う。ポリープがあっても、きっと良性だ。
4、毎年ひっかかるので、もう既に胃カメラを先にすましておいた。
5、心配だが、胃カメラもいやだし、暇もない。だけど、機会があれば二次検査を受けようと思っている。
6、その他
ポリープは形態的な名称で、粘膜からぽこっと盛り上がったものはみんなポリープです。一般には良性のものを指しますが、バリウムの検診で胃のポリープというと、癌化の恐れのない胃ポリープから、癌そのものの胃ポリープまで幅広く含んでいます。ですから、2や3を選んだ人はやっぱりよくないと思います。検診を受ける意味がありません。
しかし、胃のポリープといわれて、苦しい思いをして胃カメラを受けたのに、「胃の中にはポリープも潰瘍も何もなかったですよー」なんて言われると、ホッとすると同時に腹が立ったりもします。また、本当に何もないのかなーと不安になるかもしれません。こんな経験をされた方は、指摘をうけても、ほかっておくとか、検診自体を受けないという選択をする可能性もあります。確かに、検診車が来て、集団で行う検診はあまり精度の高いものではありません。
今まで、いやな思いをした人もそうでない人も、今度、検診で胃にポリープを指摘されたら、一度は胃カメラを受けましょう。そして、自分の胃ポリープの種類と、できればピロリ菌の有無と、粘膜萎縮の有無と、それを説明できるお医者さん※にちゃんと説明してもらってください。
とにかく、二次検診を受ける前に予備知識をつけておきましょう。説明できる能力がありながら、説明しない医者もいます。せっかくつらい思いをして胃カメラを受けたのですから、多くの情報を得るために、自分で要点を聞くことが大切です。
※(日本消化器内視鏡学会専門医や日本消化器病学会専門医でも細かい説明できない人もいますし、専門医資格をとっていなくてもきちんと説明ができる医者はいますが、少なくとも胃腸の消化器病学を真剣に行っているお医者さんを選びましょう。ポイントは下に書いたような胃ポリープの種類とその意味をちゃんと言えるかどうかです。聞いて、怒るような医者は論外です。)
胃ポリープの種類 | 特徴 発見後の処置 右の写真の解説 | 内視鏡 写真 |
①ポリープ癌 | 胃のポリープ型のがんは比較的分化度が高いがんが多く(悪性度は低い)、粘膜萎縮が強い胃に多い。ピロリ菌は陽性が多いが、粘膜萎縮の強い場合、ピロリ菌は陰性となることもある。
内視鏡的粘膜下層剥離術 開腹胃切除術腹腔鏡下胃切除術などの手術で取れるなら、とにかく取る!! 右の写真:60代の男性にできた高分化型のがん |
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②胃腺腫 | 胃がんと同じような背景粘膜にできる。
遺伝子の変化は起きているが、周囲を壊したり、転移をしない状態。いわゆる前癌病変。これが、癌化することもあるし、その他の部位からがんが発生してくることもある。 以前は分化度ががんに近いものは内視鏡的切除、比較的分化度が低い物は経過観察されていたが、最近は、分化度によらず、内視鏡的に切除する場合が多い。 右写真:粘膜萎縮のある背景粘膜にできた中等度異形成の腺腫。 |
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③過形成ポリープ(腺窩上皮型) | 胃がんと同じような背景粘膜にできる。
癌化率は1%程度といわれていて、確率は高くないが、腺腫と同様に癌が混在することもある。内視鏡による経過観察し、10mmを超える場合には、場合によりポリペクトミーを施行する。ピロリ菌除菌によってポリープの多くが消失することが知られている。 右写真:上の写真はヘリコバクターピロリ菌の除菌前、下の写真は4年後の同部位(前庭部)。除菌後にポリープが消失している。 |
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④胃底腺ポリープ(ほとんどこれです!) | 健康でピロリ菌感染のない粘膜にできることが多い。特に30代、40代の女性に多発性にできるポリープはこのポリープが多い。このポリープから胃癌が発生することは極めて稀で、背景粘膜から癌が発生することもあまりない。
基本的には処置不要 ポリープがない他の人に比べ、がんの発生率が高いとは言えず、経過観察する意味もあまりない。しかし、バリウム検査を行っても、毎年引っかかるため、悩ましい。本人と今後に関し、相談している。 右写真:上の写真は75歳の粘膜に出来た胃底腺ポリ-プ。下の写真は43歳の単発の胃底腺ポリープ、いずれにもヘリコバクターピロリ菌の感染はなく、今後の胃癌の発生は少ないと考えられる。 |
胃のポリープは上の4つに大きくは分類されますが、広義のポリープはさらに色々な種類があり、また、胃がんはポリープ型だけではなく、潰瘍型や粘膜を這うように進展するタイプもあり、注意が必要です。実際、ポリープの指摘から胃カメラを施行し、偶然に他の部位にバリウムでは指摘されなかったがんが発見されるケースも多いのです。ただ、特に女性が検診で多く指摘されるポリープは、実は④の胃底腺ポリープなのです。①~③の胃ポリープを指摘された人は、胃カメラを毎年行った方がよい(ピロリ菌除菌後や、ポリープを切除した処置した後も)のですが、④はそうとも言えません。胃底腺型のポリープは、ピロリ菌の感染がない胃に出来るポリープです。つまり、今後も胃癌の発生も多くないはずです。コメントに経過観察とするのもためらわれます。人間ドックの読影医には残念ながら差があります。胃底腺ポリープに不安をあおるようなコメントをする健診施設の受診は避けた方がよいかもしれません。
2022/2/27 加藤徹哉
この記事も、平成16年頃に作っものを何度か改変しています。令和になって3年にもなるのに、胃底腺ポリープを健診のバリウム検査で、要精査や要経過観察と指摘され、多くの患者さんが不安を持って受診される現実があります。どうにかならないのかと思います。