GOT(AST)やGPT(ALT)の値が高いとき、一般的に肝機能障害と言われることが多いようです。でも、これってどういう意味?
GOT(AST)やGPT(ALT)のもともとの機能は、細胞の中でアミノ酸の代謝に使われる酵素です。血液検査では逸脱酵素といわれます。何から逸脱するかというと、細胞から血液のなかに逸脱するのです。つまりこの酵素が高いというのは、本来肝臓の細胞中にある酵素が、血中に多く混じった状態を指します。つまり細胞という風船が壊れて、中の酵素が流れ出し、血液の中に混じって酵素の量が普段より多くなるのです。
血液の中の酵素はいつか分解されなくなりますから、ずっと、この血清の酵素の量が多いというのは、新しい酵素が常に血液中に供給されている状態、すなわち、常にほかの健康な人に比べて、多くの細胞が壊れている状態と考えられます。肝臓に一番特異的な物質はGPT(ALT)です。控訴の単位ですので、U/L(ユニットパーリッター)で表されれます。
肝細胞は、普通のときでも少しは壊れるので、血清のGPTがゼロになることはありません。これを測定したものが基準値です。基準値は健康な人の95%がその範囲に入る値です。
血清のGPTが基準値の5倍ということは、ある一定の時間内で、壊れる肝細胞の数が普通の(健康な)状態の5倍ということです。酵素は活性が落ちる速さがありますので、半減期の長いものほど高めに出る傾向があります。
細胞分裂できる回数は種や臓器によって決まっています。無限に細胞分裂ができるわけではありません。何枚かのつづりの回数券を買って、最初はいくらでも使えるような気になっても、そのうち回数券もなくなってきます。細胞分裂とは生まれたときに持たされた回数券なのです。基本的に買い足しはできません。
肝臓が壊れると元に戻すために細胞分裂が盛んに行われます。細胞分裂の回数が増えると、細胞分裂のスピードが遅くなってきます。回数券の枚数が減ってくると、大事に使おうとするのとよく似ています。
これが、毒物を解毒したり、蛋白を作ったりする、本来の肝臓の機能を、ゆっくりですが、確実に低下させていきます。
B型肝炎やC型肝炎などのウイルス、脂肪肝、薬剤性(ほとんどの薬剤は副作用の欄に肝機能障害と書いてあります。書いていない薬を探す方が難しいくらいです。)、アルコール、自己免疫性、胆道の炎症や閉塞など、肝障害の原因は実にさまざまです。
原因によって将来の見通しが違ってきます。ですから、肝機能障害の原因の見極めがとても大切になってきます。
たとえば、γーGTPが高くても、その人がアルコール飲みで、その他の胆道系の酵素の上昇がない場合、肝障害ではないかもしれません。γーGTPもやはり逸脱酵素で、細胞が壊れることにより血液中に増えますが、アルコールで細胞内に誘導される酵素でもあります。つまり、アルコールを飲むことにより、細胞内のγーGTPの濃度が上がり、同じ数だけ細胞が壊れても、血液の濃度が上昇することがあります。一方で、初期にはγーGTPだけが上昇した胆管がんを経験したこともあります。肝障害の見極めは、画像診断、血液検査など、総合的判断が大切です。
肝機能障害といわれたら、症状がなくても、医療機関を受診し、腹部超音波検査や、さらに詳しい血液検査を受けて、原因をきちんと追究しましょう。2022/3/11 加藤徹哉