ピロリ菌感染を考える2(ピロリ菌抗体価について)

ピロリ菌の抗体価について

さて、ピロリ菌の検査で最も簡単なのは、採血で測定できる抗体です。ただ、ピロリ菌の抗体の値は2015年くらいまでは、ほぼ全ての研究が栄研のEプレートという抗体を測定するキットで測定されてきましたが、最近、感度が落ちるという理由と、機械での操作がしやすいという理由で、ラテックス法という方法になりつつあります。しかも、色々なメーカーが参入してきており、基準値は変化していなのに、感度がキットによって一致していないため、混乱が起きています。現在多く使われているラテックス法は、IgA抗体やIgM抗体まで測定され、それも数値に反映されるといわれており、たとえばデンカ生研のキットは感度が高いため、抗体価が30くらいでも、実は陰性のこともあります。キットによって感度が違うのは仕方がありませんし、また、将来のことと除菌の事を考えると、特異度と感度をどちらかをとるなら、感度を取る傾向があるのも当然なのかもしれませんが、最近、他院で陽性と言われて、除菌するために来院されたが、実は除菌前から陰性だったという事例は少なくありません。しかし、機序を理解しないといつまでも同じ事が起きます。栄研のEプレートで測定したら偽陰性が、デンカ生研のキットなら偽陽性が増えることとなり、中間の栄研のラテックス法なら、他の2つより、比較的近い割合で、偽陽性、偽陰性が混在することとなります。抗体価はどのようなカットオフ値を設定しても問題が残ります。

2021年5月、ちょうど、このブログを書いている一年前ですが、日本ヘリコバクター学会において加藤元嗣先生、伊藤公明先生が、「血清抗体価は現在のピロリ菌感染状態を反映するものではない」「除菌治療前には、血清抗体法だけではなく現感染診断に適した検査を実施し、陽性であることを確認すること」などを声明で出しています。ひとつ知っておいてもらいたいのは、ピロリ菌感染をすると、粘膜萎縮は時間と共に進展していきますが、抗体価にはピークがあるということです。ある抗体価を見た時、特に低値においては注意をする必要があります。3つの状態が考えられます。比較的初期、除菌後、そして、粘膜萎縮の進んだ晩期です。当初のABC検診において、A群で癌が少なく、D群で最も多いのはそのためです。A群には未感染群と除菌後群(特に自然除菌後群が注意)、感染のごく初期が入っていたと考えられます。感染の初期から中期は抗体価の上昇する時期です。ピロリ感染が進展すればするほど粘膜萎縮が進み癌が出来やすい状態になります。抗体価が最も高いのは、萎縮度のC-3からO-1の時期です。その後、ピロリ感染が継続し、粘膜萎縮が進むのに、徐々に抗体価は低下します。また、除菌療法、あるいは他の疾患で抗生剤を内服すると、知らない間に胃のピロリ菌が除菌されることがあります。いわゆる自然除菌とか、偶発除菌とか言われる状態です。この場合は、粘膜萎縮の進展が止まり、抗体価も急速に低下します。D群は粘膜萎縮が強く、抗体価が低値の状態、つまり、ピロリ感染が相当長く続き、粘膜の荒廃が進んだ状態か、ピロリ感染以外の理由で粘膜荒廃が進んだ状態、A型胃炎などが考えられます。とても癌が出来やすくなります。このような抗体価の自然史を知ることとは、今後の内視鏡の必要性などの方針を立てるのに役立ちます。ちょっと複雑ですが、キットの違いはこの基準が底上げされているだけと考えると、考えやすいと思います。

大事なことは、抗体価のみで判断せず、内視鏡所見と、組織検査しない時には、尿素呼気試験や便抗原、保険適応の関係で、胃がんなどの疑いがある時には組織検査の際、癌の有無を見るだけだけでなく、ピロリ菌の有無を確認してから、現感染と、既感染の区別をしっかりつけてから、除菌療法を開始することです。   令和4年5月22日 加藤徹哉

ピロリ菌感染を考える2(ピロリ菌抗体価について)

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